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2009-11-04 12:26

日本に本当の外交官はいるか

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 大きな期待のもとに船出した鳩山政権が、さまざまな意味で清新なイメージを国民に与えてくれていることについては何度も触れた。とはいえ、敢えてアキレス腱とは言わないが、それこそ弁慶の泣き所のようなテーマが幾つかあることも、周知の通りだ。その最大のものは連立政権の構成、就中国民新党との連携で、折角のクリーン・イメージが汚染される結果になってしまっている。郵政役員人事はその最悪のケースであることは、多くのひとが認めるところだ。それ以外にも予算は、その出来次第によっては、「それみたことか、単なるバラ撒きじゃないか」と言われかねない。

 それでも、こと予算についてなら、自民党政策の負の遺産を払拭するのには、さすがに数ヶ月では無理だった、と強弁すれば、一年の時間の余裕はできるかもしれない。同じ論法が使えそうで使えない、あるいは使うべきではないのが、沖縄の基地問題だ。「一部の兵力が削減されたり、移動したから、公約違反にはならない」というのは、いかにも児戯に等しい論理だ。それは、だれよりも言っているご本人が承知されているだろうから、そこは不問に付そう。

 平時の独立国にこれほど多くの外国軍が駐在していること自体、異常だ。有事の際に、極めて片務的な日米安保による「核の傘」の下に日本が保護されている、という事情を考慮に入れても、5万人に対して基地を提供しているというのは、平時において決して当然視される数字ではない。のみならず、その基地が著しく不均衡な形で沖縄に集中しているというのも、歴史的経緯はともかくとして、決して等閑視してよい事態ではない。その意味では、選挙に当たって民主党が掲げたマニフェストには妥当性があったといってよい。しかし、報道されるところによれば、米国は「(自民党政権時代になされた)日米両国間の話合いの結論を尊重すべきだ」という態度を全く崩さないという。ならば、鳩山政権が取りうる途は二つに一つだろう。

 一つは、先の予算編成と同じで、「国際交渉には相手があり、過去の経緯がある。残念ながら今回は改訂することは出来なかったが、次の改定期(発議はいつでも可能である)には再度提案する」とする途だ。「マニフェストは守れませんでした」という話で、妙な屁理屈で正当化したりしないことを意味する。第二は、「過去の経緯はともかく、沖縄の基地縮小がない限り、改定には応じられない。場合によっては、米軍の沖縄(あるいは本土も含め)駐留を認めないこともあり得る。その結果、日米安全保障条約そのものについて米国が再考することもやむを得ない」と、強面に出る途だ。米国が沖縄の基地統合、あるいは縮小に同意しないことを前提にすれば、この二つの選択肢ししかないことは、自明だ。外交努力というのは、その中間点を見いだす努力のことだが、果たして鳩山・オバマ両政権の間に外交はあり得るのだろうか。かつて欧州の著名な外交官が「ノーといったら、その人は外交官ではありません」と言ったという。いかに明示の形でノーと言わないで、ノーというか、という話だ。さて、日本に本当の外交官はいるのだろうか。
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