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2009-09-30 07:40

亀井・藤井で金融・財政は大丈夫か

杉浦正章  政治評論家
 演説のビデオという動かぬ証拠があっては、首相・鳩山由紀夫も認めざるを得ない。9月29日、筆者のスクープ「鳩山も返済猶予発言」を追認した。特ダネ賞は自分で自分に贈呈するしかないが、問題はこれまで「与党に合意ない」と亀井構想に否定的発言を続けてきた鳩山が、こともなげに亀井との“密約”につながる発言をしたことが問題だ。金融業界の反発と混乱は著しく、亀井発言の度に銀行株は下落。これに確信犯的な財務相・藤井裕久の円高誘導発言も加わり、輸出産業を圧迫。鳩山政権の財政・金融政策はまさに「人災」でシッチャカ、メッチャカの混乱状態にある。鳩山は記者団に「元本は返済を猶予する。銀行もやっていけないから、金利の部分だけは支払う、というような法案の在り方を考えてみたいと(民主党)代表時代に再三、申し上げた。その思いは今でも持っている」とあっけらかんと、自らも亀井発言に参画していたことを認めた。政権スタート早々でなければ、メデイアから袋だたきにあう発言だろうが、メディアの記者のニュース判断も問われる。

 同行記者は、街頭演説での度重なる発言をニュースだと理解できなかったのだから、どうしようもない。みっともない話だ。IT時代はスクープが大新聞の専売特許ではないことが分かっただけでも小気味よい。亀井と鳩山は、選挙期間中「返済猶予」では完全に一致していたが、利子まで猶予するかどうかでは一致していなかったようだ。しかし発言から見れば、臨時国会で処理という方針では合意しており、「鳩山・亀井密約」の存在は疑うべくもない。組閣人事で鳩山が亀井を郵政担当だけでなく金融担当に起用したのが意外であったが、狙いはモラトリアム実施の密約履行にあったことが鮮明になった。それにしても、暴力団からの政治資金問題や消費者金融・武富士との関係など、亀井にはうさん臭いうわさが山積しているだけに、金融相としての“身体検査”は大丈夫だったのだろうか。だいたい“浪花節”で金融政策をやられてはたまらない。

 首相の「特ダネ追認発言」で「元本返済猶予」はもう後に戻れなくなった。政府は、内閣府副大臣・大塚耕平に「義務化しない」などトーンダウンの方策を練らせるようだが、首相発言を追い風に亀井が自説をどこまで譲歩するか、微妙だ。銀行業界ではモラトリアムを実施すれば銀行の貸し出し対象の格付けを確実に下げることになり、かえって中小企業の資金繰りを圧迫するという見方が常識だ。加えて昨日書いたようにモラトリアムは憲法違反の疑いが濃厚だ。「財産権は、これを侵してはならない」とする憲法第29条の趣旨に違反するとする説だ。憲法の保障する経済的自由権の侵害になるという見方もある。銀行の預金は預金者のものであり、政治権力の介入には限度があるのだ。

 もう一つの問題が、財務相・藤井だ。就任以来確信犯的に「円高誘導」を続けてきた。藤井の狙いはやはりポピュリズムだ。「円高→物価下落→消費者が喜ぶ→政権の支持率が上がる」という単純きわまりない発想だ。企業が9月決算で窮地に陥ることなどとんと念頭にない。慌ててこれもトーンダウンしているが、もっと重要な問題がある。それはガソリン税の暫定税率廃止だ。廃止は即2.5兆円の財源喪失を意味する。消費税1%分に相当する額だ。税収は当初予算で見込んだ46兆の達成はとても無理で、場合によっては40兆を割り込む公算もでてきている。国の財政は巨額の財源を手放していい状況にはない。加えて、3人子供がいれば家が建つ子供手当は、財源5兆円。消費税2%分だ。「民主党の議員として大臣になったのだから、マニフェストは守りなさい」と、藤井はこれも財源どこ吹く風のノーテンキさ。行き着くところは「財政破たん」となると専門家の間でもささやかれるまでに至っている。藤井も77歳。いくら大蔵省出身でも、もう古い。閣僚発言に金融市場が揺さぶられている。金融・財政政策はまさに人災に遭っているようなものではないか。
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