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2009-08-21 07:41

選挙後の混乱は10年は続くだろう

杉浦正章  政治評論家
 朝日新聞の「民主300議席」報道は、筆者が記述してきた総選挙の潮流をまさに裏付けたものとなった。自民党は土砂崩れのような敗退で政権の座を去るばかりか、党自体が1955年の保守合同以来の存亡の危機に至るだろう。民主党が単独過半数で政権の座につき、他の野党との連立で参院とのねじれ現象も解消する。衆院議席での絶対多数確保は、政権運営が容易になるように見える。しかし、背後には小泉郵政選挙と同じ内政・外交・安保にわたる政策上の“欺瞞(ぎまん)の構図”があるうえに、党内に最右派から最左派までを抱え、政権運営の実態は困難を極めるだろう。崩壊は内部から起きる可能性が高く、政界の混乱は長期に続くと見た方が良い。

 他紙に先駆けて朝日が行った調査の結果は、週刊誌などの無責任な予測と異なり、強い衝撃を政界に及ぼしている。民主が300議席をうかがい、自民が半減以上の後退という内容は、一種のスクープ的な性格を帯びる。読売と日経が8月20日に「300超」とやっているが、二番煎じで完敗だ。朝日は慌てて書いた感じであり、他社が書きそうだとの情報を得て、急きょ掲載したことも推測される。民主党幹事長・岡田克也が党内引き締めのため「1週間前の予測は当たったためしがない」と述べているが、これは逆だ。最近の調査はまず当たる。これは自民党の6月時点の調査として、筆者が小選挙区の当選者を87から89議席、全体で130議席と予想した水準と符合する。これを下回る可能性すらあるのだ。結党以来の議席の落ち込みであり、自民党は総裁たる麻生太郎が責任をとって辞任し、後継を選ぶことになる可能性が大きい。しかし後継次第では、党分裂の危機に至るかも知れない。この数字では反撃のチャンスは当分到来しない。

 一方鳩山由紀夫が政権の座につく民主党は、300議席近くを取った場合、当初はブームで浮かれるが、祭りの後は深刻な問題、陥穽に満ちあふれており政権運営は容易ではない。問題は鳩山自身に、300議席を統率し、最左派の民社党まで入れた連立を維持する力量があるかどうかだ。筆者は、鳩山があまりに政治家としての線が細く、右顧左眄する体質があり、難しいとみる。まず試されるのが、来年度予算案の年内編成だ。公約通り景気対策の補正予算を組み替え、来年度予算の概算要求を白紙に戻して、出し直させ、臨時国会で「国家戦略局」関連法案を成立させ、同局を設置。そのうえで骨格を作る、などの手順を踏んでの年内編成が可能となるか。極めて難しいだろう。年内編成が出来なければ、景気を直撃し、政権は大きくつまずく。

 次ぎに、党代表2代にわたる政治資金疑惑が選挙戦のどさくさで放置状態になっているが、小沢一郎の秘書の公判が始まり、国会では鳩山自身の献金偽装疑惑が、紛れもなく再浮上する。脱税の疑いまで生じており、鳩山が首相としての説明責任を果たせなければ、これも大打撃となる。予算を辛うじて編成しても、子供手当の「ばらまき政策」に象徴される財源問題に直面する。「子供を3人産めば、新築ローンが払える」額が手当てされ、国民に不公平感が生じる事は目に見えている。懸念材料は、とりわけ外交・安保にある。米大統領オバマは300議席を取った政党の首相を、日本国民への配慮から当面厚遇するだろう。しかし、アフガニスタンにおけるテロとの戦いで、1月から“給油”活動をストップさせて対案があるのか。海賊対策ですら反対の社民党が、今度は「非核3原則の法制化」を主張、鳩山は検討を約しており、これは日米安保体制を確実に直撃する。内政・外交・安保にわたって「チェンジ」が可能か、どうか、が危ぶまれる課題が山積しているのである。チルドレンが140人に達するかも知れない小沢の「院政」も確実に展開され、重くのしかかる。

 加えて党内に「日の丸・君が代」反対の最左派勢力を抱え、連立相手の社民党は、社会党左派に先祖返りしている。しかし、300議席取った以上、政権は失政をしようが、公約を無視しようが、まず解散をしないだろう。4年間は維持し続けて、“水に落ちた犬”である自民党の内部崩壊を促すだろう。鳩山が力量不足で倒れれば、岡田に首相を変えるだけだ。このように鳩山政権は前途多難なスタートを切り、これが政局の混乱に輪をかけてゆくだろう。自民党が分裂しないで、この危機を持ちこたえれば、2大政党による政権交代が可能な健全な民主主義に発展する可能性があるが、それはまだ読めない。政界の混乱は10年は続くだろう。
 
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