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2009-08-20 18:32

ミャンマーに「変化の兆し」あり

大江 志伸  江戸川大学教授・読売新聞論説委員会特約嘱託
 閉塞状況に陥っていたミャンマー情勢に、「変化の兆し」が出てきた。米国人を無断で自宅に滞在させたことが国家防護法違反にあたるとして、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんに禁固3年の実刑判決を言い渡したうえ、軍事政権が1年6か月の自宅軟禁への「減刑措置」をとった一件である。騒動の張本人である米国人(禁固7年)の身柄引受けのため、ウェッブ米上院議員(民主党)がミャンマー入りする展開もあって、一層注目を集めた。

 米民間人の居宅侵入という珍事は、軍事政権にとって渡りに船だったはずだ。スー・チーさんの軟禁は今年11月で期限切れの予定だった。「減刑措置」という名の事実上の軟禁延長によって、軍事政権は来年実施が公約となった総選挙からスー・チーさんを完全排除することに成功したことになる。軍政側のなりふり構わぬスー・チー封じに、欧州連合は経済制裁の強化を即決した。国際社会の厳しい対応は、当然のことだろう。

 一方で、冒頭指摘した「変化の兆し」も過小評価すべきではないだろう。第一は、オバマ米政権の今後の出方だ。同政権は制裁一辺倒だけでは民主化につながらず、むしろ中国依存を深めさせたとの視点から、ミャンマー外交の見直しを進めている。ウェッブ議員訪問について、ミャンマー国営紙は「両国関係改善への一歩になる」と前向きの評論を掲げた。スー・チーさんと面会したウェッブ議員は、「スー・チーさんは制裁の一部解除に反対ではないとの印象を受けた」と証言している。事実なら、第二の重要な「変化の兆し」といえる。

 ミャンマー情勢を語る際、軍事政権の非道ぶりが常にクローズアップされてきた。だが、筆者が接した一般のミャンマー人や現地関係者からは、スー・チーさんの「妥協を許さない潔癖さ」も情勢を複雑にしてきた、との指摘が多々聞かれた。つまり、スー・チーさんの潔癖さに欧米社会が強く共感し、軍事政権が一層頑なになる構図である。「変化の兆し」が真の「変化」につながると見るのは楽観的に過ぎるが、現状打破の突破口となる可能性は否定できない。本来なら、制裁一辺倒とは一線を画してきた日本外交こそ出番のはずだが・・・・。
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