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2009-08-18 07:48

民主党は社民党最左派路線をどうする

杉浦正章  政治評論家
 党首討論を聞いて気づいたのは、社民党を巻き込んだ民主党連立政権の危うさである。読売新聞だけが社説で指摘しているが、最大のポイントは両党党首の間で外交・安保政策をめぐって決定的なズレが表面化した点にある。読売は「これで安定した連立政権が築けるとは、到底思えない」と言い切っているが、その通りだ。連立が予定される国民新も含めた野党三党がまとめた「共通政策」にも外交政策への言及がないのは、ここに問題があったからなのだ。

 まとまったのは当たり障りのない内政問題だけで、外交・安保を避けて通っているのだ。まさに世を欺く偽装結婚のようなやり方ではないか。討論で社民党党首・福島瑞穂は、旧社会党左派を基盤とする同党の主張を繰り返し、民主党代表・鳩山由紀夫に迫った。社民党はドイツやスエーデン社民党の柔軟路線と比較しても、世界でも珍しい「一国平和主義」で反米を基調とする路線を取っている。朝鮮総連に対しても友好関係を維持する最左派の政党だ。その路線は共産党よりも左と言って良い。まず福島は鳩山に対し非核3原則の法制化を迫った。鳩山は「社民党と協力していく中で、法制化に関しても検討はしていきたい」と配慮した。「持ち込ませず」を法制化すれば、対米関係がどうなるか目に見えているにもかかわらず、言質を取られたのである。

 次いで福島は、インド洋での給油活動について「自衛隊の即時撤退」を表明、民主党との政権協議においては「自衛隊を海外に派兵させないという観点から、きちっと協議する」と主張した。海賊対策でも「ソマリア沖の自衛隊派遣に反対だ。海上保安庁が主体であるべきだ」と主張した。民主党の政権獲得の流れが強まっていると意識して福島は、連立協議へのポジションを確保する動きに一挙に出た形だ。野党三党の「共通政策」が、裏の調整で外交・安保問題がまとまらなかった構図が判然とした形である。まとまらないというより、まとめなかったというのが正しいかも知れない。

 民主党の主張は、給油については外交の継続性から即時撤退はせず、海賊対策も是認する方針であり、福島との隔たりは大きい。このままで行くと、総選挙後の三党連立協議では社民党に引きずり回されることになるが、問題は民主党内が持つどうかだ。鳩山は現在のところ社民党と同様の主張の党内旧社会党左派への配慮をしている形だ。選挙対策で左の票もかき集めなければならないからだ。しかし選挙後に党内右派は黙っているだろうか。恐らく自衛隊海外派遣はおろか、敵基地先制攻撃論まで主張する勢力は、黙っていまい。社民党との連立はひたすら参院での多数確保にある。衆院での勝ち方にもよるが、本当にこの最左派政党に政権への参画を認め、非現実的な外交・安保政策を選択するかどうかの問題が、改めて提起されてくるのは明白だ。
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