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2009-08-07 10:05

日本のファーストレディたちの外交

中山 太郎  研究所客員研究員
 民主党への流れは、もう誰にも止められない勢いだ。自民党は、壇ノ浦合戦の前の平家のようだという人もいる。自民末期政権時代の外交を総括してみる上で、最近会ったある米国人知人の見方を参考までに披露する。小泉首相は、夫人が居ないので除外するとして、安倍、福田、麻生の3首相の夫人、ファーストレディーたちへの評価はどうか?いずれも合格点をつけられるとのことだ。訪米の際、安倍夫人がブッシュ大統領に「任期中一番苦しかつたことはなにか」と問い、ブッシュ大統領が今にも泣かんばかりに「イラク戦争での兵士たちの死を思うときだ」と述べ、安倍夫人がコンパッションの嗚咽をした場面は、大きなインパクトがあった。

 中国は、まだ首脳外交場面での夫人の表現で遅れていて、損をしている。いかし、かっての蒋介石夫人の宋美麗さんのような例もあるので、やがてキャッチアップしてくるであろう。江沢民夫人が、米国での晩餐会の席で何も食べないので、横に居たクリントン大統領が「奥様いかがしましたか」と尋ねたところ、「もう、食べてまいりました」と答えたのは、ワシントンで評判になった。米国の知人曰く「友人の中国人は従来から、『米国の食事はまずい。米国人の食事に呼ばれるのは苦痛だ』と正直に言う。食べてから夕食会などに出るそうだ。しかし、首脳間の正式ディナーでは、それは問題だろう」と。

 福田夫人は、小泉政権での正式晩餐会のホステス役を立派に勤められた。麻生夫人も、構えたところが無く、立派だ。麻生総理は、サミット出席の機会にカトリック教徒としてドイツ出身の法王に会われた。フランス初めカトリックの多いEU、南米などで、麻生総理が親近感をもたれていることは事実だ。世界の11億以上の人々を、味方にしないまでも、敵にしないことの重要さを、日本人は知らない。小泉時代のアングロ・サクソンに特化した対外態度を、うまく調整している。カトリック教徒であることを、なぜか隠し通した細川総理と比べると、その態度はフェアーである。

 麻生が、カトリック教徒になったのは、祖母の吉田雪子氏(吉田茂夫人)が、教徒として日本外交に並々ならぬ貢献をされたからだ。雪子夫人の父、牧野伸顯は日本外交のドンであり、祖父、大久保忠通は明治の元勲だった。その類まれなる語学力を活かし、戦前の大事な外交の場面で貴重な役割を果たされた。10年もの長きにわたり駐日大使をつとめた米国のグルー大使夫妻との交遊は有名だが、戦前日本を訪問した多くの米高官が、雪子夫人の気品あふれる日本紹介ぶりを印象深く書き留めている。これらの記録は、ワシントンのアーカイブに保存されている。新政権でのファースト・レディーは、世界でどう評価されるか。(おわり)
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