国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-06-17 15:51

(連載)平和条約問題解決には「痩せ我慢」も必要(1)

袴田 茂樹  青山学院大学教授
 プーチン首相が5月に訪日し、原子力分野など経済関係の諸協定が結ばれた。7月に麻生首相とメドベージェフ大統領の首脳会談も予定されている。その会談では平和条約問題の解決に向け、ロシアはあらゆるバリエーションについて話し合う用意がある」というプーチンの発言もあった。

 ここで冷静に考えてみると、日露関係ではかなり奇妙な状況が生まれている。ロシア側は、日露関係に関して「日本側は北方領土問題にしか関心を向けていない」と批判する。日本人は、政治家も、政府関係者も、ロシア人に会えばかならずこの問題を出すからだ。国際的にも「日本は、領土問題にこだわりすぎる」という意見もある。わが国においても「日露関係を北方領土問題に集約すべきではない」との見解がある。

 たしかに日本側はこれまで、首脳会談においても、政府間の事務レベル協議においても、北方領土問題の解決をつねに最重要課題としてロシア側に「付きつけて」きた。これは国家の主権が侵害されているという深刻な問題だからである。昨年11月、麻生首相とメドベージェフ大統領のリマにおける首脳会談で、麻生首相は「日露間では経済関係だけが進展して、政治関係つまり平和条約問題は前進していない」と強い不満を述べた。

 5月12日のプーチン首相との会談でも、麻生首相は「1956年宣言(平和条約の締結後の歯舞、色丹2島の返還を約束)では未来永劫に解決しない」と述べ、歯舞、色丹を先行させる段階的返還論も否定した。つまり、北方領土問題解決という立場から見ると、日本政府はロシア側がウンザリするほど、正論にこだわっているように見える。これを受けて、プーチンもメドベージェフも、首脳会談や記者会見の場では常に、両国関係で平和条約問題の解決の重要性を認め、「両国で受け入れ可能な形で」という非現実的な条件付きながら、「問題を解決する用意がある」と毎回述べている。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会