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2009-05-21 08:05

駐日米大使人事急転で、新聞・外務省は大慌て

杉浦正章  政治評論家
 人事報道に関しては、思い込みほど危険なものはない。駐日米大使に弁護士のジョン・ルース氏起用のニュースほど、新聞や外交当局を驚かせたものはない。駐日大使に関する報道では、報道各社のワシントン特派員は頭を刈って、皆坊主にならなければならない。ハーバード大教授・ジョセフ・ナイと信じ込んでいた罰だ。外務省もアグレマン待ちで大統領周辺を取材せず、虚を突かれたかたちだ。それにつけても大統領・オバマは露骨な論功行賞人事をするものだ。ジョン・ルース起用のニュースは、国内ではNHKが20日朝の番組で報じて、一番早かった。情報源も「アメリカ政府の高官」としており、独自取材の可能性があるが、ニューヨーク・タイムズなど米メディアも報道していたようだ。

 夕刊段階での記事を分析すると、朝日新聞はニューヨーク・タイムズに依存するところが大きい。「ニューヨーク・タイムズ紙は、2008年8月『オバマ陣営の最も早い段階からの、かつ最大の資金調達者の一人』と報じている。日本との関係に関する記述は全く見あたらない」と情報源にしている。通信社の追いかけも、速報は別として本記は、共同通信が12時41分、時事通信が12時44分と遅れた。いかに特派員が寝耳に水の人事に、夕刊段階で慌てたかを物語っている。駐日大使人事は、政治部から派遣されたワシントン特派員の重要取材対象であり、総合取材力が試される。自慢するわけではないが、いややはり自慢するわけだが、筆者も「ホドソン駐日大使」を抜いて、特ダネ賞に「耀いた」ものだ。

 報道のうろたえぶりはともかくとして、外務省の慌てぶりをみると、大使を派遣するに当たっての事前の同意・アグレマンがなかったことが分かる。現地報道が先行したのだろう。報道各社も、外務省の様子を「予想外の人事」「意外感」「想定外」と受け止めたと報じている。ナイと思い込んでいたようであり、外務省としては、アグレマンがないまま報道が先行したのに、明らかに不快感を抱いている。オバマ政権も伝えられるところによると、ナイに固執する国務長官・クリントンと選挙功労者を重視するホワイトハウスとの間に確執があったようだ。大使館がオバマ政権と密接な接触があれば、アグレマンがなくても、現地外交官の「取材」で情報を取れるはずだが、それもない。

 昔の大使館はもっと積極的で、こんなに受け身ではなかった。中国大使の人事が先行して、“日本重視”のオバマ政権としては急いで決めたようだが、中国重視の本音が人事にも現れたようだ。読売新聞が「オバマ氏は、次期中国大使に将来の大統領候補とも目されるハンツマン・ユタ州知事を指名した。日本側には今回の日中の米大使人事を比較し、『格差があるのではないか。意外な感じ』(外交筋)との受け止めも広がった」と報じているが、そう受け取られても仕方がない。もっとも大使人事ばかりは、専門家がよいとは限らない。やってみなければ分からないのだ。ホドソンもロッキードの副社長から抜擢されてよくやったし、ブッシュ前大統領との親しさから選ばれたシーファーも優秀だった。ここはオバマと直接的なパイプが出来たと考える方が良い。
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