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2009-05-01 05:59

パタヤ・サミット流会で考えること

石垣 泰司  アジアアフリカ法律諮問委員会委員
 本年4月、再三延期の末やっと開催の運びとなったASEAN+3首脳会議、東アジア・サミット等の一連の首脳会議は、参加各国首脳がタイ・パタヤに勢揃いしたと思ったら、またもや再延期された。反政府デモ隊の会場乱入という、ASEAN発足以来未曾有の事態のためである。上記事態にもかかわらず、日中韓3国首脳会議等が別途の会場で開催されたのは、唯一の救いであった。右事態は、タイの政情に起因する不可抗力による突発的事件であるが、本来なら、昨年12月にASEAN憲章の発効をASEAN首脳会議で祝う筈であったものが、ジャカルタでのASEAN外相会議で代替されていた。ASEAN首脳会議自体は、2月に開催して「ホアヒン宣言」を採択していた。

 そのあとに、タイ政府は、時期・場所を変えてASEAN+3首脳会議、東アジア・サミット等の開催に取り組んでいたが、今回再延期を余儀なくされたものであって、ASEAN+3、ASEAN+6を軸とする東アジア共同体構築への機運が若干気勢を削がれたことは否めない。しかも、ASEAN憲章の新規定によりASEAN議長国の任期が本年より暦年となり、その結果タイが昨年シンガポールから引き継いだ議長職を、本年末まで1年半務めることになった結果、本年中に開催を予定される今後のASEAN首脳会議、ASEAN+3首脳会議、東アジア・サミット等の開催の時期や、そもそもこれらの首脳会議の開催が実際上可能か否かも、タイの政治情勢に大きく依存することとなってしまった。

 このような情勢の中で、ASEAN主要国、とくにASEAN事務局が所在し、ASEANの運命に重大な関心と責任を有すると自負するインドネシアなどでは「ASEAN関係首脳会議がタイ1国の政情に左右される現状は放置できない。必要に応じASEAN事務局所在地ジャカルタなどで臨機応変に開催できるようにすべきである」等の意見も出てきているようであるが、まだASEANのルールとしては、そのような制度はできていない。このようなASEAN諸国の現状を見るにつけて、これまで「共同体構築の運転席には、ASEANが座るべきだ」としてきた地域全体のコンセンサスについて「果たしてそれでよいのか」との反省が生まれてもおかしくない。すでに昨年12月には、第1回日中韓3国首脳会議が福岡で開催されるなど、ASEANの枠組みを離れて別途の地域協力の対話実施の動きもみられる。

 さる4月27日には、中曽根外相が東アジア・サミット参加国在京大使を招いた懇談会を催し、麻生総理が先般パタヤでの東アジア・サミットで発表する予定であった「世界経済・金融危機の影響を受けたアジア諸国に対する日本の貢献策」等について説明するという外交措置をとったところ、好評であった模様だ。また、最近東京で開催された三極賢人会議では、中国代表がASEAN+6間の協力の重要性に言及するという、新しい動きもみられた。米国も、国務省アジア太平洋地域担当次官補にようやくカート・キャンベル氏を指名し、その対東アジア外交体制を整えつつある。このように、ASEAN諸国側の地域協力の足踏みがみられる間にも、様々な動きが進行している。逆に、このような時期であればこそ、ASEAN+6や米国を含む各国の政府関係者・有識者・経済人等が各レベルにおいて、地域協力の新たなイニシャティブを模索し、旧来の枠組みにとらわれない論議や提案が行われることを期待したい。
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