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2026-07-10 00:00
(連載3)国民総動員法に続く中国の域外支配法「民族団結法」の危険
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
まず、歴史上の「コミンテルン」の目的は、各国の共産党を支援し、各国で革命を起こして世界共産主義革命を実現することでした。革命の主体は各国の共産党であり、国家というより国際共産主義運動そのものが中心でした。これに対して現在の中国共産党は、「中国式現代化」「中華民族の偉大な復興」「人類運命共同体」といった理念を掲げています。現在の中国外交を見る限り、中国政府は他国で武装革命を起こして共産党政権を樹立させることを公式目標とはしていません。その意味では、冷戦期のコミンテルンや革命輸出政策とは性格が異なります。
しかし一方で、民族団結法を含む近年の中国の法制度には、「中国共産党の政治的価値観を中国国外にも一定程度及ぼそうとしているのではないか」と受け止められる要素があります。その代表例が域外適用規定です。この法律では、中国国外であっても民族団結を損なう活動に対して責任を追及できるとしています。もちろん、日本や欧米で中国法が直接適用されるわけではありません。しかし、中国への入国禁止、企業活動への制限、中国国内の資産への措置など、中国政府が自国の権限の及ぶ範囲で圧力を加える法的根拠として利用される可能性があります。
この点は、単なる国内法というより、中国政府の政治理念を国外にも反映させようとする制度の一つと見る研究者もいます。また、この法律は少数民族政策とも密接に結び付いています。従来の中国では、「56民族が平等に存在する」という建前が比較的強調されていました。しかし近年は、「中華民族共同体」という概念が前面に出されるようになっています。この考え方では、民族ごとの独自性よりも、「一つの中華民族」であることが優先されます。その結果として、新疆、チベット、内モンゴルなどでは、中国語教育の拡大、歴史教育の統一、宗教活動の管理強化などが進められており、これらを「民族統合政策」と評価する立場もあれば、「文化的同化政策」と評価する立場もあります。国際的な人権団体や一部の政府は後者の立場から懸念を表明していますが、中国政府は国家統一と民族平等のための政策であると説明しています。
台湾についても、この法律は「中華民族共同体」の一部として位置付けています。中国政府は台湾問題を内政問題と位置付けていますが、この法律によって「台湾住民も中華民族共同体の構成員である」という理念が法律として明文化された意味は小さくありません。これによって、中国政府は台湾に対する文化的・教育的・政治的な働きかけについて、国内法上の根拠を一つ追加したことになります。(つづく)
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