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2012-01-12 00:00
中国のパキスタン援助ディレンマ
岡崎研究所
シンクタンク
Foreign Affairs12月4日付で、米外交問題評議会のEvan A. Feigenbaumが、パキスタンは中国の南アジア政策の要だが、パキスタン経済財政の弱体化や治安状況は中国の重荷になっているので、米国はこの状況を利用して、米中共同のパキスタン政策を模索できるかもしれない、と言っています。
すなわち、中国にとってパキスタンとの友好関係は、中国西部の安定と繁栄に寄与し、南アジアではインドに対抗、さらには米国の影響力を排除するのにも役に立っており、有用であることは間違いない、しかし、パキスタンにいる中国人技術者らは現地人の暴行に悩まされており、将来、リビアからの中国人の大挙引き揚げのような事態が起きることも予想される、その上、投資のリスクもある。通常、中国の投資は政府によって保護され、他の国がついて行けないようなところにも投資するが、それにも限界がある。債務が膨らんでいるパキスタンが良い投資先がどうかわからない。それに中国国内にも環境問題などで投資の必要があるので、国内投資との配分も考えなければならない、結局、両国の友好関係は変わらないとしても、今後、中国がパキスタンの大規模なインフラ投資などを援助し続けられるかどうかわからない。このように中国のパキスタン政策が苦境にある今、米国はパキスタンの安定について中国と共通の利益を見出すことができるかもしれない、と言っています。
結論を無理に対パキスタン政策における米中協調に持って行った感がなくもありませんが、中国が対パキスタン政策で苦境にあるという分析には目を開かせられる思いがします。これはおそらく正確な分析なのでしょう。いかに戦略的に重要な国であろうと、その国の責任を全部引き受けるのが不可能なことは、米国でさえもベトナム、イラク、アフガニスタンで多大の国力を消耗しながら、その歴史的評価がまだ定まっていない例で明らかです。中国と言えども、独りでパキスタン経済を救うことに限界があるのは当然でしょう。
それに、中国には中国にしか無い大きな問題があります。それは中国人が持つ抜きがたい中華思想で、それが海外で中国人だけの社会を作らせて現地で孤立し、現地人の反感を買という事態につながっています。過去数世紀の東南アジア華僑の歴史は、数十年ごとに起きる反華僑暴動とそれによって破壊された中華街の再建の繰り返しでした。アフリカにいすわった中国人に対して暴動が起きるのも時間の問題かもしれません。今の中国は、場所によっては、軍隊を派遣することもできますが、そうなると益々現地の反感を買うことは避けがたいでしょう。こうした中国の苦境に乗じて、お手並み拝見とばかりに座視するのではなく、米中共同のパキスタン経済援助を提案しているのは独創的です。その際、米印関係の調整が必要でしょうが、米国のパキスタン援助は既定路線なので、インドも反対はできないでしょう。問題は、これに中国を捲きこむことの可否であり、これには高度の外交的戦略的判断と関係国間の調整が必要となります。
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