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2011-12-09 00:00
水源覇権をねらう中国
岡崎研究所
シンクタンク
米国のオピニオン・サイトProject Syndicate10月14日で、インドの資源戦略専門家、Brahma Chellaneyが、中国が中国領内から周辺諸国に流れ出る大河にダムを乱立させて下流諸国に水不足を起こしながら、話し合いを拒んでいる現状について、世界の警戒を呼び掛けています。
すなわち、中国の経済力や軍事力増大による影響、海洋への野心等は注目されているが、近代史上類のない水資源の覇権国としての中国の台頭という問題は看過されてきた、先ず、(1)中国は世界最大のダム建設者であり、今も、南北間での水迂回計画を作り、チベット高原の水資源を黄河に振り向けようとしている。(2)そのダム建設熱の対象は中国国内から国外に拡大しつつあり、例えばメコン川に高さ300メートル以上の4200メガワットの小湾ダムを完成しており、ブラマプトラ川では、三峡ダムの2倍の発電量を持つMetogダムを作ろうとしている、しかも、アジアにある大河のほとんどは中国を水源としているため、水資源をめぐっていくつもの下流諸国との紛争を起こしている。例えば、下流のバングラデシュやカザフスタンでは水不足を起こしており、カザフスタンを経由してロシアのオビ川に合流する黒イルティシ川でも水位低下や農薬汚染が起きている、ところが、中国は、水資源の配分についてどの国とも条約を結んでおらず、流域諸国との多国間協力にも冷淡な態度をとってきた。メコン下流域の諸国などは、中国のこうした戦略は「分割統治」を目論むものと見ている、と言っています。
この問題は、水資源の管理が国家、国際機関の介入を必要としてきているという、一つの典型を示しています。そして、中国の場合、下流国の水を枯渇させる問題の他に、農薬汚染や中国領内の工場排水によって化学汚染を起こす問題もあります。そうした中国との間で水資源の問題を持っている国は、ロシア、カザフスタン、バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ベトナムと多岐にわたり、インドも潜在的には抱えています。ただ、中国の場合、政府が一貫した戦略の下に世界の水資源攻略を進めているというよりは、ダム建設業など様々な利権が突っ走っている面があるでしょう。
この問題は日本には直接の関係がありませんが、次の点は指摘できます。先ず、日本国内の水源地を中国人が買い占めているとの観測が、マスコミで流布されています。実態はそれほどでもないようですが、ダミーによる買収もあると思われ、実情把握に努めるとともに、法制上の規制措置を取るべきでしょう。他方、中国北部の水不足は、日本の日本海側や北海道等にとって飲料水輸出の好機を提供します。県ごとの対応では経済効率が悪いので、運輸ルートや効率的な運輸方法の開発等、政府が支援するべき面も多いと思われます。また、日本はhonest brokerの立場から、国連等において、水源国の権利・義務等について国際条約を作成する音頭を取ることができるでしょう。こうした条約は本気で作る必要もなく、また簡単にできるとも思われませんが、日本が常に中国をめぐる問題についての話し合いの輪の中にいることが、対中外交上もプラスになるでしょう。
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