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2010-09-08 00:00
アジアの同盟国による緩やかな連合
岡崎研究所
シンクタンク
1.7月27日付けの『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の紙面で、米 AEI の Daniel Blumenthal 氏は、つぎのように論じている。
アジアの同盟国は米国主導の緩やかな連合を作って、中国軍事力の台頭に立ち向かうべきだ。ASEAN地域フォーラムでクリントン国務長官が、南シナ海の領海紛争は「多国間」で平和的解決を図ることが米国の国益になると述べたことに、中国が強く反発し、アジア域内問題の無用な「国際化」を図るものだと非難したが、この発言はオバマ政権として正しい一歩だった。最近中国が南シナ海を「中核的国益」に関わる領域と呼び、その大半は中国に所属すると主張していること自体は、台頭する強国なら言いそうなことであり、驚くにあたらない。ただ、米国の専門家たちは、中国の台頭は穏やかなものになると言い続け、そのため、オバマ政権は当初、中国が大国になることに異議は唱えないとする「戦略的再保証」政策をとった。ところが、中国は逆にそこに米国の弱さを嗅ぎつけ、南シナ海をめぐって強硬姿勢を露にし始めたのだ。
そこでようやく米国も事態を把握、クリントンに続いてゲイツ国防長官もインドネシアとの軍事関係再構築に着手するなど、同盟を強化し、パートナー諸国を糾合して中国の台頭に対抗する姿勢をとり始めた。同盟国の方も、単独では中国とやりあえなくても、互いに力を結集し、米国がそこに加勢すれば、北京に立ち向かえるだろう。これは歓迎すべき米国の変化であり、待ち望まれたものだ。この際、米国は、弱体化しつつある太平洋の米軍事力を強化し、さらに同盟国の緩やかな連合を作って、その本部をどこか同盟国の首都に置き、アジアの安全保障を担う同盟国の外交官や軍人が集まる場にすべきだ。米国が「再保証」を与えるべき相手は中国でなく、友邦各国の方であり、中国には、彼らが最も良く理解する「力」を示すべきだ。
2.中国の南シナ海進出に拍車がかかっていることは、事実だ。南沙、西沙諸島をめぐる関係諸国の対立は、2002年の相互の合意によって棚上げになったとされ、これを受けて、米国の一部の中国専門家は北京の友好姿勢の表れと評価したが、この見方は現実によって裏切られたと言える。その最たる証拠が、その防衛のために武力行使も辞さないという意味の「中核的利益」という言葉の使用です。そうした中で、ブルーメンソールは、中国と対抗するために同盟諸国による協力ネットワークを作り、本部を「同盟国の首都」に置くという、新鮮かつ建設的な提案をしています。ブルーメンソールは明示していませんが、中国周辺諸国の中で米国と同盟ないし準同盟関係にあるのは日本と韓国、さらにはタイ、フィリピン、シンガポールですが、今の情勢では放っておけば、本部がソウルかシンガポールに行ってしまうのは目に見えています。東京は進んで名乗りを上げるべきでしょう。なお、残念ながら、日本のメディアは切迫する足元の変化を報じようとする姿勢が希薄で、例えば、中国が、海南島を潜水艦基地だけでなく、新興富裕層向けのリゾート基地にし、結果的に西沙海域を占有しようと計画していることや、同海域の無人の環礁について占有権の「登記」を積極的に促していることなどを十分伝えていません。
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