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2010-07-05 00:00
支持率急落のなか、必死の巻き返しを図る菅
杉浦 正章
政治評論家
7月4日日曜のNHKと民放の「党首討論」を録画して、つぶさに見た。新聞は日曜のサボり癖が抜けないのか、皆素っ気ない報道ぶりだが、首相・菅直人の“逆襲”が目立っていた。とりわけみんなの党の渡辺喜美を集中攻撃、ぎりぎりの選挙戦でみんなの党が自民党にまさるとも劣らない“好敵手”になっていることをうかがわせた。さすがの渡辺もたじたじ。一方で、新党改革代表・舛添要一には連立を持ちかけるなど、したたかさを見せた。内閣支持率が軒並み急落し、民主党政権の過半数割れが極めて高くなってきたなかで、必死の巻き返しの状況だ。
内閣支持率は由々しき状況だ。朝日が発足当初の60%から39%に、読売が64%から45%に、それぞれ急落、消費税増税論への反発の根深さを見せつけている。こうした中で「いつでも1対1の真剣勝負ならやる。1対8の議論は議論ではない。下手をすると吊るし上げになる」と、連立の国民新党まで“敵”とみなして、「党首討論」を渋っていた菅だが、なかなかどうして4日の討論では、準備万端整えて、攻撃的だった。まず始めに「当方からも質問させてもらう」と先制攻撃を宣言。主にみんなの党と共産党をやり玉に挙げた。共産党は近ごろ喧伝している「消費税は法人税減税の財源にするため」(委員長・志位和夫)という主張について、「それは法人税収が24兆円もあった昔の話。国際競争を今の法人税率でできるのか」とやり込めた。次いで矛先をみんなの党代表・渡辺喜美に向けた。
まず、渡辺が「30兆円の埋蔵金がある。これを活用すれば消費税増税はしなくて済む」と発言していることについて、菅は「外為の埋蔵金なら税外収入として既に予算に盛り込んである。渡辺さんの労働保険金から5兆円を取り出すというのは、スジが悪い」と決めつけた。そもそも有権者は民主党の「埋蔵金20兆円」で懲りている話であり、渡辺の30兆円はまさに誇大妄想の部類だ。菅はそこを突いた。加えて、「民間人材登用・再就職適正化センター」を将来のある時期を決めて廃止するようにするサンセット方式を渡辺が推進しようとしていることについて、「自分が作ったものがおかしいから、廃止法案を出した。サンセットというなら、反省をこめて『廃止』といわないと、責任逃れだ」と急所を突いた。渡辺はおたおたして、「暫定措置だから」と言い返すのが精一杯。菅は渡辺攻撃で相当理論武装して望んだ感じが濃厚だった。
一方、自公政権批判は「政権担当の9か月間のことを非難するなら、その前自公政権11年間で220兆円の国債乱発したことを言わなくては不公平」と主張。これには公明党代表の山口那津男から「菅総理は自社さ政権の時に国債を増やしたことをお忘れか。そういうことは言えないはず」と切り返され、水掛け論に終わった。消費税に関して谷垣が「大きな認識は一緒だ」、「消費税の問題提起は評価する」と、ここに来てなぜか“敵に塩を”送り始めたのを奇異に感じた。事前に世論調査の動向が耳に入っていたからに違いない。消費税増税を菅にけしかける作戦とみた。白眉は、舛添に対して菅が「一緒にやってはどうか」と持ちかけたこと。筆者はかって小沢一郎のボディランゲージを読んで幹事長辞任を予言したが、舛添は全身でうれしさを表現した。舛添は口では「いくら団塊の世代だからといって、そう簡単には」と述べたが、満面笑みのボディランゲージは「入閣なら、すぐOK」と読めた。背景には、菅も過半数割れの可能性を強く認識していることをうかがわせた。
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