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2010-07-01 00:00
中国を過大評価することへの警告
岡崎研究所
シンクタンク
5月18日付けの『ファイナンシャル・タイムズ』紙は、Joseph Nye 米ハーバード大教授の「まだ中国の世紀になったわけではない」との論文を掲載して、中国に対する過大評価を戒めています。これは、中国過大評価を警告するトーンの論文として、今後各方面で引用されるかもしれません。
それによると、(1)中国が重きをなしているのは、将来中国は大国になるとの予想の下に皆が動いているからだが、20世紀初頭にドイツがGDPと軍事力で英国を抜いた時とは違い、今の中国はまだ米国にはるかに遅れをとっている、また、(2)たとえ中国のGDPが米国のそれを抜いたとしても、一人当たりGDPの格差、農村の遅れ、少子化、民主化の遅れによる社会の不満、金融市場の未整備等の問題は残り、米国と本当に対等になるわけではない、さらに、(3)中国が経済力をつけてくれば、政治、文化、軍事面でも力を行使したがる傾向は出てくるかもしれないが、アジアにはアジア独自の勢力均衡があり、米国のプレゼンスも多くの国から歓迎されている。それに、中国が強く出れば、アジア諸国は連携してそれに対抗するだろう、と述べ、
米中協力は必要であるが、米国が過度に自信を失ったり、中国が自分の力を過信したりすれば、それも難しくなりかねない、と言っています。ナイは、「紛争は不可避との思い込みが、紛争を引き起こす」という古代ギリシャの哲学者ツキジデスの言葉を引用し、米中関係がそうした状況に陥らないよう、危険因子、すなわち、中国を過大評価して、米国が自信を失ったり、不必要に好戦的になる、あるいは中国が自己を過大評価して、過度の自惚れとナショナリズムに陥る、ことを排除しようとしているわけです。このナイの主張には、賛同できます。中国を過大評価することは、日本を過小評価することにもつながっており、日本としても中国の将来性を冷静に測定しておく必要があります。
中国経済については、(1)毎年8%とされる中国の経済成長率は、その「達成」に昇進がかかっている官僚達があらゆる手段で「達成」したように見せかけている可能性が大きく、信憑性に疑念がある、(2)地方官僚が地元銀行に「融資をさせて」企業に「作らせた」製品の中には、使いものにならないものも多いと思われ、無規律に増えた銀行融資のかなりの部分は不良債権化して、中国経済を脅かしている、(3)国内経済の大きな部分は相変わらず大型国営企業によって担われているが、こうした企業では共産党官僚が権限を持ち、経済性を軽視した経営が行われがちだ、ということが指摘できるでしょう。つまり、現在の中国は、輸出の上がりを国内建設で膨らませて、何とか社会全体の所得水準向上を図っていますが、ソ連型社会主義経済の殻をつけたまま、そして党・政府主導のまま、これからも順調に成長していけるか、疑問があります。
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