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2010-06-14 00:00
見えてきた民主党政権の本質
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
めでたく菅政権の船出である。一方では、旧自民党の薄暗い部分を忠実になぞった親分・子分を切り棄て、他方では、なんとも名状し難い政治的無能力者をリーダーからやっと降ろし、清新な顔ぶれや話題性のある人材を起用し、どうやら8ヶ月前、国民が期待した新鮮な民主党政権への復帰である。世論もこれを好感したとかで、内閣支持率もV字型反騰。それに期待を繋ぐ党内世論から「国会会期は延長せず、人事一新の効能が薄れないうちの総選挙に決定した」という。割を食ったのは特定郵便局長の利益代表グループで、郵政法案が次期国会送りになった。さりとて「だめなものは、だめ」式の単細胞な対応もとれず、「連合は維持するが、大臣は辞任する」という弥縫策でお茶を濁したのは、ご愛嬌というべきか。郵政国有化への逆行という愚行を、本当に国民が支持しているとはいまだに信じられないが、それにしても審議に時間をかけて、その問題点を明らかにするのは、結構なことだ。
鳩山・小沢体制で選挙に入ってくれないか、と野党は全て望んでいたと思う。それがなまじ上げ潮になりそうで、がっかりどころか、枯れすすきに怯えかねない有様だ。政変それ自体が、小沢氏のシナリオだったという説まで、まことしやかに囁かれているのは、その一例だが、上げ潮ムードだった「みんなの党」の渡辺氏も、珍しく慎重な口ぶりに変わってきている。で、問題なのは、あの二人を切ったら、8ヶ月前の清新な民主党に回帰したのか。いやそれどころか、「奇兵隊」の出現で、より素晴らしい政治が期待できるようになったのだろうか。あの珍妙な宰相の奇行、能天気は別にして、この間に幾つか見えてきた民主党の核の部分、あるいは本質のようなものがある。いわば8ヶ月前には見えなかった側面が、明白になってきたということだ。幾つか見えてきたうち、二つだけ指摘してみる。
第一に、この政党は「大きな政府」志向だということだ。いかに公務員人件費を削減しようが、公共事業を減額しようが、大きな枠組みと舵取りは政府が行なう、という信念がある。地方自治体に権限委譲をする、官庁間の垣根を取り払う、ということはしても、民の活力を最大限に生かし、名実共に「官から民へ」の実行を期待することはできない。表現は悪いが、お節介体質で、国民はわれわれが主導してよき方向に導く、というのが基本にある。いかに国民の支持を訴え、理解を求めても、この本質は変わらない。経済も、福祉も、断固政府主導だ。その意味では、掛け声はともかくとして、「脱官僚」などは、やろうとすれば普天間の二の舞になるだけの話で、出来る訳がない。もっともこれだって悪いことばかりではない。何かというと「政府は何をしている」が好きな国民性だから、かえって受けが良いかもしれない。
第二に、自民党の派閥とは趣を異にするが、民主党もかなり体質の異なる構成員の寄り合い所帯で、間一髪のところで妥協が成立すれば良いが、そうでない可能性は常に存在する。これを結びつけている論理は「草の根」実証主義ともいうべきもので、共同で行動したことの連帯感と経験主義に限りなく近い。そのことは、菅総理の施政方針演説からも明らかだろう。生活実感に基盤を置く政治は、利点ももちろん多いが、それのみに依存する危険性は、改めて指摘するまでもない。一つ間違えば教条主義に堕するのも見やすいだろう。政党を名乗るからには、どこにだって異見を持つグループは存在する方が正常だ。ただ、この党には、頻発する山猫ストと鉄の規律の一枚岩の間を揺れ動く可能性と危険性が、他の政党に較べて大きいように見受けられる。ワンマン社長の現場巡視と同じで、自分の意見と同じやつは「愛いやつ」だが、そうでないのには聞く耳を持たない、ということにならねばよいのだが。
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