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2010-05-31 00:00
社民、“辺野古扇動”で先祖返りの「反米・反基地」攻勢へ
杉浦 正章
政治評論家
社民党の政権離脱は、外交・安保政策の調整なき「野合政権」の実態が露呈されたことにほかならない。社民党の動きは、首相・鳩山由紀夫への支持率低下に“反比例”して、同党への関心を高め、参院選にプラスに作用させる狙いがある。実態は「反米・社会主義路線」の原点への先祖返りであり、辺野古への移転反対闘争を願ってもない起爆剤として、全国的に「基地反対」を訴え、党勢拡大につなげようとするものだ。口から生まれたような党首・福島瑞穂の派手な動きは、罷免と政権離脱の元手を参院選向けに回収しようとしている姿に他ならない。まさに福島罷免と社民党の鳩山政権離脱は、目くそが鼻くそを笑っている図だ。目くそは福島、鼻くそは首相・鳩山由紀夫だ。目くそは教条主義的社会主義路線に先祖返りして、政権を離脱した。政権にとっては仏壇の奥にあった「反米・非武装中立」の位牌(いはい)がなくなり、政権全体の左傾化路線が、やや復元した。
一方、鼻くそは沛然と降る驟雨のような辞任要求の世論に耳を傾けることもなく、居座ろうとしている。新聞の世論調査でも、朝日の内閣支持率が17%に、読売も19%に下落している。これでも鳩山は退陣しないのか。日本の政治は落ちるところまで落ちた。衆参の国政選挙での国民による「選択のし直し」が早急に必要であると痛感する。社会主義政党の特徴は、必ず最後は教条主義に帰ることだ。福島の行動を「潔い」「筋を通した」という一般の見方があるが、これは間違っている。福島の目くらましにだまされている。本人が「土井たか子さんが『駄目なものは駄目』と言ったが、『駄目なものは駄目』です」と、まさに先祖返り発言をしているのを見るべきだ。「非武装中立・反米路線」への回帰、これが一見歯切れのよい「辺野古移転絶対反対」の真相だ。「沖縄米軍基地海外移転」の論理は、すべての米軍基地の日本からの撤去を主張してきた旧社会党の思想であり、社民党の党是でもある。戦後の社会主義路線の骨格を形成するものだ。福島が筋を通したのは「党是」の筋を通しただけなのだ。
繰り返すが、そもそもいまや世界でも珍しい「社会主義路線への回帰」を象徴したのが福島罷免劇の実態だ。福島は、最大限罷免劇を活用したに過ぎない。本来なら首相が沖縄まで行って、辺野古移転の政府案で謝罪したのだから、福島が反旗を翻して辺野古移転反対を訴える沖縄訪問をするなら、辞任してからすべきであったろう。それを自らの訪沖後に罷免させて、プレイアップしたのだ。5月28日の首相・鳩山由紀夫との最終会談で、官房長官・平野博文が「辞任」を持ち出したのを一蹴したのも、世論向けの演出だ。問題は鳩山が憲政の常道を全く知らず、辞表提出を求めるべきところを、罷免して、まんまと福島のペースにはめられたことだ。ここでも暗愚さを露呈した。さすがに海千山千の政治家は本筋を見ている。渡部恒三はテレビで「社会党は村山内閣を作った時点でイデオロギーを捨てている。今頃になって昔のイデオロギーを持ち出しても通用しない」と述べ、塩川正十郎も「社民党は、社会主義の化石。化石がものを言っても通るまい」と看破している。
いまは福島の表面的行動を見て感心する向きも、やがては気づくだろう。今後社民党は沖縄の反基地闘争をあおりにあおる活動を展開するだろう。これを全国的な基地撤廃運動に連動させ、「反米・反基地」の訴えを集票の基軸に置く動きを見せる可能性が高い。参院改選3議席のうち2議席しか取れないと予想される状況を打破するため、独自候補の擁立も進めるだろう。これに有権者が乗るかどうかだが、まさに統治される側の能力「被統治能力」が試される時だ。沖縄県民も社民党に“利用”される要素があることを心すべきだ。鳩山政権は、連立の崩壊で「しっぽが胴体を振る状態」からようやく離脱した。しかし「頭の欠陥」はいかんともし難い。国家運営の基本である安保・外交で連立内での議論を回避して、あいまいのまま左派政党と連立を組んだ政治認識の甘さが、原因であった。政権内最左派はいなくなったが、鳩山政権はばらまき・郵政準国有化など本質的に社会主義路線であり、社民党の存在で左傾化が著しかった面が、若干復元したに過ぎない。幹事長・小沢一郎の政権戦略は根底から揺らぎはじめた。今週から「鳩山・一郎」体制そのものの存否が党内外から問われる状況に突入する。
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