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(連載1)米朝首脳会談の決断と非核化という難題  ツリー表示
投稿者:斎藤 直樹 (神奈川県・男性・山梨県立大学教授・60-69歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-07 08:16  
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No.3334
 トランプ大統領は、6月1日に改めて6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談の開催を決断した。これにより、米朝首脳会談に向けてトランプも後に引けなくなった。北朝鮮が「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄(CVID)」を短期間に履行して初めて体制保証や経済支援などの見返りを提供するという方針をトランプは堅持してきたが、米朝首脳会談開催を決断するに及び、完全な非核化に向けた包括的な合意には時間を要する可能性があることを斟酌し、一回の首脳会談ではなく数回の首脳会談が必要かもしれないことを示唆する内容の談話を発表した。トランプが3月10日に「私はすばやく立ち去るかもしれないし、あるいは対話の席に着いて世界にとって最も素晴らしい取引ができるかもしれない」と語ったのは遠い過去のことのようである。米朝首脳会談を間近に控え課題山積の非核化への取組みについてトランプが現実的かつ柔軟な姿勢になりつつあるとも捉えることができるが、実際には金正恩朝鮮労働党委員長に少しずつ歩み寄っている感を受けないわけではない。これが米朝首脳会談に向けた必要不可欠な歩み寄りなのか、それとも北朝鮮の完全な非核化の完遂が余りにも難しいことを認識し、首脳会談での成果を自らの業績とする方向への転換であるのか。多少なりとも原理原則に執着した感のあったトランプが現実的かつ柔軟になったと言えるとは言え、首脳会談で両首脳が合意に達することは極めて難しいことが想定される。

 双方とも非核化の完遂を公言しているが、その意味するところには相当の食い違いが存在するのが実際である。何故に、完全な非核化についての合意が難しいかについて検討する必要があろう。非核化とはどのようにも解釈されうる曖昧模糊とした語句である。トランプと金正恩の間では非核化の方式を巡り相当の溝が存在していることが伝えられている。トランプの持論とする非核化の方式とは、北朝鮮が「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」を先行して履行すれば、体制の保証や経済支援など相応の見返りを提供するというものであった。要するに、北朝鮮がまず完全な非核化を完遂しなければならず、完全な非核化の完遂が確認されて初めて見返りを米国が付与するという立場である。これに対し、非核化の方式について金正恩が事ある度に示唆してきたのは「段階的で同時並行的な方式」である。同方式にしたがえば、非核化の完遂に至る行程は数段階から構成される。例えば、第一段階において北朝鮮が非核化の対象となる核関連施設や核関連活動の申告を行うのと同時並行する形で、米国は第一段階の見返りを提供する。第二段階において北朝鮮が核関連施設や核関連活動を凍結するのと並行して、米国は第二段階の見返りを提供する。第三段階において北朝鮮が核関連施設の廃棄を行うのと並行して、米国は第三段階の見返りを提供する。

 このように「段階的で同時並行的な方式」とは非核化の全過程を数段階に区切り、段階ごとに北朝鮮が非核化の措置を履行するのと同時並行する形で、米国がその都度見返りを提供する方式である。ただし、米国の視点に立つとき、各段階において検証が的確に行われなければならないことは言うまでもない。この間、水面下で非核化を巡る協議が米朝間で続けられた。5月9日に平壌で開催された金正恩・ポンペオ会談において、ポンペオ国務長官は金正恩に対しすべての核兵器と保管場所について公開し査察を受けることに加え、短期間で核兵器やICBMの一部を北朝鮮国外に搬出することを要求したとされる。ポンペオの要求に金正恩が理解を示したことを受け、6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談が決まったと5月10日にトランプが発表した。ところがその後、5月24日にトランプは「・・あなた方の一番最近の声明で示されたとてつもなく大きな怒りとむき出しの敵意に基づけば、私はこの時期に長く準備されてきた首脳会談を行うことは適切ではないと感じている」とし、米朝首脳会談の開催の中止を一旦は発表した通りである。

 米朝双方が主張する非核化の方式は細部の違いではなく本質的な違いとして残っている。その後の推移を踏まえても、非核化の方式を初めとして細部について実質的には何も煮詰まっていないと言えよう。このことから明らかな通り、非核化の方式についての擦り合わせが米朝首脳会談において大きなハードルとなることは間違いない。同様に重大な問題として浮上するのは非核化の対象である。北朝鮮領内での非核化対象が想定されている以上にはるかに多いことは難題をトランプ政権に突き付ける。寧辺(ニョンビョン)に集中する核関連施設や6月24日に爆破、廃棄されたとされる豊渓里(プンゲリ)の核実験場だけが非核化の対象ではない。実際には多数に及ぶ地下核関連施設が北朝鮮領内に点在するとされ、それらの地下施設の一部において現在も核兵器開発が行われている可能性がある。しかも米国の情報機関も地下核関連施設での核関連活動について十分に把握していないとされる。(つづく)

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